【初の是正勧告】島村楽器にフリーランス法違反 ― 音楽講師の「無償レッスン」はどこが問題?
こんにちは、クラリ社会保険労務士事務所です。
2025年6月、公正取引委員会から島村楽器株式会社に対して是正勧告が出されました。
対象となったのは、2024年11月に施行されたばかりの「フリーランス・事業者間取引適正化等法」、通称「フリーランス法」に関する複数の違反行為です。
今回は、事実関係を整理したうえで、フリーランス講師や発注企業が注意すべきポイントを社労士の視点で解説いたします。
実は当事務所代表の氏川も、かつて島村楽器でフリーランス講師としてレッスンを行っていた経験があり、今回のニュースには特に大きな関心をもって受け止めています。
📌 何が問題だったのか? ― 公取委の発表より
違反内容①:取引条件の不明示
契約時に、報酬や支払い時期、業務内容などを書面または電子で明示しなかったことが、
法律第3条第1項に違反すると認定されました。
違反内容②:報酬の支払い遅れ
86人分の講師報酬を、定められた期日までに支払っていなかった事実が認められ、
法律第4条第5項に違反すると判断されました。
違反内容③:無償での体験レッスン
11名の講師に、合計19回の無償の体験レッスンを行わせていたことが、
「不当に経済的利益を提供させる行為」とされ、
法律第5条第2項第1号違反となりました。
📖 フリーランス法とは? ― 簡単におさらい
「フリーランスとして業務委託を受ける者の取引の適正化等に関する法律」は、
2024年11月1日から施行された新しい法律です。
対象は、企業や個人事業主がフリーランス(≒個人事業主)と取引する場合。
特に、取引条件の明示義務や報酬の60日以内支払い義務が定められ、
フリーランスの立場を守るためのルールが法律で明文化されました。
🎼 音楽講師の現場で起きていたこと
今回の勧告は、音楽教室に携わる多くのフリーランス講師にとって、
「やっと声が届いた」と感じるものだったかもしれません。
• 契約書がないままレッスンが始まる
• 条件変更が口頭のみ
• 体験レッスンを「営業活動」として無償で求められる
• 支払いが遅れることが常態化している
こうした実態が、今回の件で初めて**“法律違反”として明確に可視化された**のです。
今回のような是正勧告が出たことは、音楽業界やフリーランスだ働く方にとっても大きな意義があると感じています。
💡 発注者側(企業・音楽教室)が気をつけるべきこと
1. 契約条件は文書またはメール等で明示する(契約前 or 契約時)
2. 報酬は原則60日以内に支払い、遅延はNG
3. 「体験レッスン」も業務の一部であり、無償で依頼するのは違法リスクあり
4. フリーランスの立場でも、妊娠・育児等を理由とした不利益扱いは禁止
👩🏫 フリーランス講師側が知っておきたいポイント
• 「フリーランスだから守られない」はもう過去の話
• 契約内容は必ず書面で確認しよう
• 無償レッスンを求められたら、まずは「これは報酬が出るか」を確認
• トラブルになった場合は、公取委や労働局への相談も視野に
🧾 まとめ:フリーランスが、安心して働ける社会へ
「立場が弱いから」と無償で働かされる社会は、もう終わりにしなければなりません。
クラリ社会保険労務士事務所では、フリーランスの働き方、契約、報酬に関するご相談もお受けしています。
この記事が、誰かの「安心して働くための一歩」につながれば嬉しいです。
クラリ社会保険労務士事務所
代表 氏川巳央(社会保険労務士)
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