長く勤めたのに退職金ゼロ!?
退職金制度の「ある・なし」と、知っておきたい注意点
「もう10年以上も働いたのに、退職金が出ないなんて…」
そんな話、実は珍しくありません。
退職金って“もらえるのが当たり前”だと思っていませんか?
今回は、退職金にまつわる素朴な疑問から、制度の落とし穴、そしてトラブルを防ぐためのチェックポイントまで、現役社労士がわかりやすく解説します。
退職金制度は“義務”じゃない
意外かもしれませんが、退職金制度は法律で義務づけられていません。
つまり、会社が制度を作らなければ、退職金がゼロでも法律違反にはなりません。
厚生労働省の調査によると、退職金制度を設けている企業の割合はおおむね7割前後。
中小企業では導入していないところも多く、「勤続年数=退職金がもらえる保証」ではないのが現実です。
「ある」と思っていたら「ない」…?制度の中身に要注意
「うちは退職金制度がありますよ」と言われても、内容は会社によってバラバラ。
例えば…
• 勤続3年未満は支給なし
• 自己都合退職だと大幅減額
• 懲戒退職は全額カット
• 業績悪化時は支払い見送り可(就業規則に規定あり)
…など、細かい条件が設定されていることが多いのです。
✅チェックポイント
• 就業規則や退職金規程を確認したことがありますか?
• 雇用契約書に記載はありますか?
よくあるトラブル事例
①「退職金はあると思ってた…」
入社時に口頭で「退職金はあるよ」と言われたけれど、就業規則には記載なし。
→個別の合意があれば請求可能だが、立証が難しいケースも。
②「自己都合退職で大幅カット」
規程では自己都合退職は支給額が半分以下。
→不合理な差でなければ、合法とされるケースが多いです。
③「懲戒解雇で全額不支給」
会社が懲戒解雇を理由に退職金ゼロ。
→重大な背信行為など、合理的理由がないと無効になる可能性もあります(最高裁昭和49年判決など)。
退職金の支給が“労働条件”になっている場合
会社が退職金を「当然の慣行」として支給してきた場合、それが労働契約上の権利とみなされることもあります。
判例でも、長年支給されていた実績+合理的期待がある場合、急な廃止は無効とされたケースも。
「もらえない」と思う前に確認したいこと
1. 就業規則や退職金規程を確認
2. 入社時の説明・雇用契約書をチェック
3. 過去の支給実績(他の社員がもらっていたか)
4. 社会保険労務士や労働相談窓口への相談も選択肢
まとめ:退職金は「権利」とは限らない。でも…
退職金は「必ずもらえるお金」ではない一方で、会社が約束している場合や過去の慣行がある場合には、一定の保護を受けられる可能性もあります。
「自分はもらえるはず」と思い込まず、正確に制度の中身を確認することが第一歩です。
万が一トラブルになった場合は、泣き寝入りせずに専門家に相談することをおすすめします。
________________________________________
💡退職金に関するお悩みは…
クラリ社会保険労務士事務所では、
退職金制度や就業規則の見直し、労使トラブルの相談にも対応しています。
お気軽にご相談ください。
0コメント