会社から突然「明日は休んで」と言われたら
事例:アルバイト、週3回のシフト制で働いているAさん
明日はシフトの日。しかし前日に会社から電話が。
「ごめんね、明日は休んで。」
え~!仕事に向けて準備万端だったのに…
このように突然、会社から「明日は休んで」と言われた経験はありませんか?予定通り働くつもりだったのに、会社の一方的な指示で休まされる…。こんな時、従業員としてどう対応すれば良いのでしょうか?
会社の命令であれば「強行突破」はできない
まず前提として、会社の指示に反して無理やり働くこと(強行突破)はできません。
労働契約に基づき、労働者は会社の指揮命令の下で働くことになります。そのため、会社が「休んで」と命じた場合、原則として従う必要があります。
「会社都合の休み」には休業補償を求められる!
ただし、ここで重要なのは「休業補償」の問題です。
会社の都合で休ませた場合、労働者に何の責任もないのであれば、会社は賃金を支払う義務を負います。
休業補償とは
労働者が働く意思と能力があるにもかかわらず、会社の都合で仕事を休まざるを得ない場合(いわゆる**「使用者の責めに帰すべき事由による休業」**)、労働者の生活を守るために賃金の補償が発生します。これが「休業補償」です。
この根拠は労働基準法第26条に定められていますが、民法上の基本的な考え方として、民法第536条第2項が重要な位置付けとなります。
民法第536条第2項
債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は反対給付を受ける権利を失わない。
この条文の意味
この規定は、契約において「債権者(ここでは会社側)」の責任によって、相手方である「債務者(ここでは労働者)」が労働の義務を果たせなくなった場合でも、労働者は本来受け取るべき対価(=賃金などの反対給付)を請求できる、というものです。
もし、会社側の都合で「明日は休んで」と命じられ、労働者が働けなくなった場合、それが天災事変等の不可抗力でない限り、会社(債権者)の責任によるものと考えられます。そのため、労働者は働いていなくても賃金を請求する権利がある、というのが民法536条2項の考え方です。
労働基準法との関係
民法の一般原則に加えて、労働基準法第26条では次のように規定しています。
労働基準法第26条
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は休業期間中当該労働者にその平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。
つまり、会社の都合による休業の場合、労働者は**少なくとも平均賃金の60%**を受け取る権利があります。これが「休業手当」と呼ばれるものです。
民法536条2項では「反対給付(賃金全額)」の請求が認められる可能性もありますが、こちらは任意規定とされていますので、契約により適用しないこともできるでしょう。そうなると強行法規(当事者の意思に関係なく適用される法律)である労働基準法が優先されるため、まずは平均賃金の60%以上の支払いが義務付けられています。
会社から「うちは経営が苦しいから休業手当は払えない」と言われても、それが通用するケースはほとんどありません。万が一、休業手当が支払われない場合は、労働基準監督署への相談を検討しましょう。
まとめ:会社から「休んで」と言われたら確認すること
1. 理由を確認する
会社都合なのか、不可抗力なのかを明確に。
2. 休業手当の規定を確認する
就業規則や労働契約書をチェック!
3. 支払いがない場合は相談を
明らかに会社都合なのに手当が支払われない場合は、労働基準監督署や社会保険労務士になどの専門家に相談を。
突然の「休んで」に戸惑うこともありますが、労働者の権利をしっかり理解しておくことで、安心して対応できます。不安な場合は、専門家に相談することも大切です!
クラリ社労士事務所では、休業に関するご相談について、事業者の方・労働者の方どちらからのご相談も受け付けております。専門家が適切にサポートいたします。
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