残業キャンセル界隈を社労士が解説

~残業は断れる?会社の指示はどこまで有効?~

SNSで「残業キャンセル界隈」という言葉が広がっています。

「今日は残業してって言われたけど、帰ります!」といった投稿を目にした方も多いのではないでしょうか。

労働者にとっては「残業したくない」「急な事情で帰りたい」、会社にとっては「業務上どうしても必要」というそれぞれの思いがぶつかる場面です。

ここでは、法律や裁判例をもとに「残業命令と拒否できる範囲」を整理してみましょう。


1. 残業は「お願い」ではなく「命令」

会社には労働契約に基づいて業務を指揮する「指揮命令権」があります。

就業規則に「業務上必要がある場合は残業を命じることがある」といった規定があれば、残業は単なるお願いではなく業務命令となります。

したがって、基本的には労働者は残業を行う義務があります。


2. それでも残業を断れる場合がある

とはいえ、残業命令が万能というわけではありません

労働者が残業を拒否できる場合は次のようなケースです。

• 健康上の問題(過労で倒れそう、持病が悪化するなど)

• 家族の介護や子どもの病気など、やむを得ない私的事情

• 残業命令そのものが違法(36協定がない、過大な時間外労働など)

こうした場合、残業命令の合理性が失われ、労働者の拒否は認められます。


3. 裁判例から見る「残業命令の合理性」

実際の裁判では、「残業命令が合理的かどうか」が大きな争点になります。

◎ 日本食塩製造事件(最二小判 昭和62年7月10日)

会社が繁忙期に時間外労働を命じたことについて、最高裁は「業務上の必要性に基づいた時間外労働命令は有効」と判断しました。

◎ 大阪市水道局事件(大阪地判 平成9年3月)

長時間にわたる時間外労働を強制した事案では、「労働者の健康を著しく害する可能性がある」とされ、残業命令の有効性は否定されました。

→つまり、業務上の必要性があり、かつ労働者の健康や私生活への侵害が過大でなければ有効、というのが裁判所の考え方です。


4. 「残業キャンセル」はリスクもある

正当な理由なく残業を一方的にキャンセルすると、職務命令違反とされる可能性があります。

注意・指導だけで済むこともありますが、繰り返せば懲戒処分に発展することも。

一方で、会社が無制限に残業を命じられるわけではなく、残業命令には合理性が必要です。


5. 実際に残業を断りたいときの行動ポイント

「今日はどうしても残業できない…」というとき、次のように行動するとトラブルになりにくくなります。

1. 理由を正直に伝える

 例:「子どもが熱を出したので」「体調が悪くて病院に行きたい」など。

2. 事前に伝える

 可能であれば勤務中に伝えるなど、突然の“ドタキャン”は避けましょう。

3. 証拠を残す

 口頭だけでなく、メールやLINEで簡単に「今日は事情があり残業できません」と残しておくと安心です。

4. 繰り返さない工夫をする

 頻繁に断る必要がある場合は、上司や人事に相談して勤務時間の調整を検討しましょう。


6. まとめ

• 残業は基本的に「会社の命令」として義務がある

• ただし、健康・家庭・違法な命令など、合理性がない場合は拒否できる

• 裁判例でも「業務上の必要性」と「労働者の不利益」のバランスが重視されている

• 断るときは正直に・早めに・証拠を残すことが大切

「残業キャンセル界隈」は単なるSNSのノリではなく、現実に労使関係で起こり得る問題です。

正しい知識と伝え方を知っておくことで、余計なトラブルを避けることができます。


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